|
新春到来
|
|
正月休み明け。登校すると相変わらずハルヒは頬杖をついて窓の外を眺めていた。
だが、何だろう…微妙に不機嫌というか近寄りがたいというか微妙なオーラを出している。
いつもの機嫌が悪い時とは違う妙な感じだ。
「よう。どうした?浮かない顔して、何かあったか?」
「別に。何も無いわよ。」
絶対嘘だ。ほぼ毎日のようにハルヒと顔を合わせている俺の経験則から言ってコイツは今何かを思い悩んでいるはずだ。しかし、これ以上深く追求しても余計にへそを曲げるに相違ない。
「そうかい。何を考え込んでるのかは知らんが、溜め込むのは体に良くないぞ。適度に発散してすっきりしちまうのも良いんじゃないか?まぁ、無理にとは言わんがな。」
「そうね。考えとくわ。」
答える前に一瞬ハルヒがビクっと反応したのを俺は見逃さなかった
そっけない返事とは裏腹に、微妙に動揺しているような雰囲気も感じる。
一体何があったというんだ?皆目見当もつかないが気になる。
そんな微妙な空気を背中に感じながらの授業の内容が俺の脳味噌に記録されるわけもなく。
まぁ、普段とて授業の内容を覚えているわけでもないので変わらないと言えば変わらないのだが…
いつも以上に落ち着かない午前中の授業を終えた昼休み。
普段なら終業の鐘と同時に食堂へ向かうハルヒが窓の外を眺めたまま動こうとしない。
ハルヒのステータスがメランコリー状態になるのは稀にあるとはいえ飯も喉を通らない程とはただ事ではない。俺は弁当を食い終わると半ば強引にハルヒを教室の外に連れ出した。
「何があったのか話してみろ。」
「うるさいわね。朝にも言ったけどなんでもないわよ。」
「お前が飯も食わないなんて、よほどの事だぞ。俺にも言えないような悩みでも抱えてるのか?」
「そんなんじゃないわよ。もうほっといてよ!」
「お前を心配して言ってるんだ。言いたくないなら無理には聞かないが、俺もいつまでもお前のしょぼくれた顔なんて見たくないんだよ」
「だから、そんなんじゃないってば…」
聞けばハルヒは、クリスマスから正月にかけての暴飲暴食が祟り体重が増えたことを気にしてダイエットを決意したらしい。
「だからって飯を抜くことも無いだろ。ぶっ倒れたらどうするんだ。」
「だって、この2週間で1.5キロも増えたのよ!このままブクブク太っちゃったらどうするのよ!」
「それくらい普段のお前の調子であちこち走り回ってればあっという間に元に戻るよ。
それに、ちょっと位増えたからってしょぼくれてたら戻るものも戻らなくなっちまうぞ。
お前が気にするほど見た目だって変わってない。それどころか全く変わってないと断言できる。
毎日お前を見ている俺が言うんだから間違いない。俺でも気付かない変化を他の誰が発見できるって言うんだ?
俺はよく食って良く動いて皆を振り回すくらい元気の良いお前が好きなんだ。
飯抜いて痩せてもな、そんな不健康な方法で痩せた元気の無いお前なんか見たくないぞ。」
一瞬戸惑った表情を浮かべたハルヒだったが、どうにか俺の説得を聞き入れてくれたようで、ハルヒは、俺は飯食った後何だから俺を連れて行くことも無いだろう。という俺の言葉を無視して俺の手を引いて食堂に向かうと残り少ない休み時間で一気に定食を胃の中に押し込んだ。
そして、午後の授業を迎えたのだが…
なんだかクラスの連中から生暖かい視線が注がれている気がする。
朝から暗く沈んでいたハルヒを昼休みに俺が廊下に連れ出していつの間にか居なくなったと思ったらハルヒが元に戻っていたので俺が何かしたと勘違いでもしているのだろうか…。
ハルヒのステータスが元に戻ったのは喜ばしい事なのだが、後ろの席で鼻歌交じりに授業を聞いているハルヒが、真冬のこの時期に桜でも咲かせてしまいそうな位に上機嫌なのは何故だろう…何故だろう。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|