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ハルヒとバーに
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ハルヒ「キョン!バーに行きましょ!」
キョン「却下だ。一回前にお前酔っ払ってお酒は飲まないって言ったんじゃないのか?」
ハルヒ「過去は過去。今は今よ。とりあえず行きましょ」
キョン「やっぱりダメだ。バーってものは行った事が無いからよく解らんが、
お酒が出てくるところだ。酔っ払いがお前に絡んでくるかもしれん。
なんだかんだ言ってお前は綺麗だからな。もしお前が絡まれて面倒なことになって
警察沙汰にでもなってみろ。俺たち、いや、お前はどうなる?
きっと後悔するぞ。
それに俺はお前が危険な目に少しでもあわせたくないから事前に回避できることは
回避するようにしているんだ。俺の言うことを理解してくれ。
・・・わかったか?
どうしてもって言うのなら20歳まで待ってくれ。俺が連れて行ってあげるからな。」
ハルヒ「・・・・・・キョン・・・わかった。あたし行かない。
キョンに心配かけさせるなんて団長失格だわ。
それと今回みたいにあたしが時々ヘマするかもしれないから
キョンは一生あたしを監視していなさい!!」
キョン「やれやれ・・・わかったぜ。困った団長様だ」
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時間というものは以外に過ぎるのが早いもので、色々あったが気がついたら俺は20歳になっていて、今日はハルヒが20歳の誕生日を迎える。
結局俺達SOS団全員は朝比奈さんが一足先に進学した大学に学部は違えど通うことになった。
実は俺だけ学力が足りなくてランクを落とそうとしたのだが、主にハルヒ、そして長門、古泉のおかげでなんとか皆と同じところに合格することが出来た。
今思い返すと我ながら頑張ったと思う。
進路変更に悩んでいたころ、朝比奈さん(大)が急に俺を呼び出して
ハルヒと同じ大学に行かないと力が段々弱まってきているとはいえ世界が崩壊してもおかしくないくらいハルヒの精神が荒れることになると言われたからな。
これは俺だけの秘密だ。長門あたりは把握してそうだがな。
現に俺はみんなと同じ大学に進学できて良かったと思う。
週末にはいつものメンバーが集い不思議探索というのは名ばかりで普通に遊んだり楽しんだりしてるしな。
一つ違う点は俺とハルヒが世間一般で言う恋人の関係になっていることくらいかな。
卒業式のときにハルヒが壇上に上がり、急に告白してきたことは忘れたくても忘れられないほど鮮明に覚えている。
あの時俺がなかなか返事を言わないから皆からへたれ呼ばわりされたっけな。
了承したらしたでクラスの皆はキスしろとか野次ってくるしな。
ハルヒの顔を見ていると昔のことが今も迫力のある映画を見ているようにはっきりと思い出されるな。
今日はハルヒの希望で俺とハルヒの二人っきりでハルヒの生まれた日を祝うことにした。
俺は前々から古泉の紹介のバイトで貯めたお金で今まで行ったことのないような料亭でご飯を食べたり、あいつの元気さを表した赤いダイヤモンドのイヤリングを方耳だけプレゼントしたりした。
何で片方だけなのってハルヒが少しアヒル口で怒っていたけどもう片方は俺の決心が固まったときに指輪と共に渡すつもりという意思を伝えたらハルヒは一瞬黙り込み顔を赤くしながらも笑顔で
「なるべく早くしなさいよ。あたしは気が短いんだからね」
と俺に人差し指を突き出しはっきりと言った。
ハルヒは大学に入ってからも順調に肉体的にも精神的にも成長し、ミスユニバースが霞んでしまうほど綺麗になった。
こいつのおかげで俺は入学早々男子どもの殺気ある瞳に晒されたな。
それにしても懐かしいな・・・。
「どうしたのキョン?神妙な顔して・・・。も、もしかして今日は二人で過ごすの嫌だったみんなで過ごしたかった?」
誕生日を満喫して隣で手を繋ぎながら歩いているハルヒの言葉ではっと気がつく。
いや、今年のハルヒの誕生日はお前がなんと言おうとも、俺と二人で過ごしてもらう予定だったから全然嫌じゃなかったぞ。
それに俺達は今日物凄く楽しんだだろ。
お前もいつも以上に輝いていたしな。
ただ、お前の顔を見ていて昔のことを懐かしんでいただけだ。特に意味は無い。
「昔って言えば、キョンあのこと覚えてる?」
あのことって何だ?内容を言ってくれないとなんともいえないぞ。
「む~、解ると思ったのに。まぁ、いいわ。高校の時急にあたしがバーに連れてけって言ったのをキョンが必死に抵抗して止めさせたことよ。『酔っ払いがお前に絡んでくるかもしれん。なんだかんだ言ってお前は綺麗だからな。もしお前が絡まれて面倒なことになって警察沙汰にでもなってみろ。俺たち、いや、お前はどうなる?きっと後悔するぞ。それに俺はお前が危険な目に少しでもあわせたくないから事前に回避できることは回避するようにしているんだ。俺の言うことを理解してくれ』って言ってくれたのよ。忘れたって言わせないわよ。あたしはこれで今まで解らなかった、ううん、解ろうとしていなかったキョンの気持ちがはっきり判明したんだから。・・・好きだって。あたしの気持ちを変えたこのセリフをあんたはちゃんと覚えているでしょう?」
・・・すまん。少し考えてみたが俺の記憶の中にはその出来事に関連した事象を一つも拾えなかった。ってスマン。スマン。頼むからグーで殴るな。
あらかじめ言っとくがパーではたいてもダメだぞ。
ハルヒはまたもアヒル口で少し不機嫌ながらも俺への攻撃を止め、俺の腕に抱きつきなおして俺に自分の体重をかけながら続けた。
「ふん!まぁいいわ。あんたが覚えているのは大して期待していなかったし。でね、あんたはあたしが20歳になったらバーに連れて行ってあげるって最後に言ったのよ」
なるほどな。過去の俺はそんなこと言っていたのか。
そうと解ったら、ハルヒ、繁華街へ戻るか。
一軒寄り忘れたお店があることだしな。
腕に抱きついているハルヒの体を無理やり方向転換させ、ハルヒの返事を聞く前に俺達は数年前にした約束を果たすため、町に戻った。
昔の俺なら自分とハルヒを守るためあらかじめ予防策を練って抵抗したりしただろう。
でも今は違う。いつどんなときだっていかなる状況であってもハルヒを最優先で守り大切にしていくと俺の中で誓ったんだ。
昔はハルヒに引っ張られたけど、今は自分から引っ張っていかないとな。
今のような幸せがずっと続くようにな。
ハルヒのふとした話で昔の約束を思い出し、それを果たすために俺達はバーに行った。
ただ単純に少しお酒を飲んでお互いいい気分になろうと思っていたのだが、そうは問屋は卸さなかった。
ハルヒは頭がいいが、時々学習能力あるのかなと疑いたくなるほどのポカをするときがある。昔の教訓を今回も活かそうとはせず、調子に乗って度の強いカクテルばかり飲んでいるからすぐに酔いが回り、ぐでんぐでんの状態になってる。
マスターと他の客に暖かい目で見守られながらもやたら俺に向かって愛の言葉を連呼するハルヒを何とかいつも俺たちが寝る前に歌っている俺の拙い子守唄を恥ずかしながら人前で駆使しつつ寝かしつけ、今は俺の背中で幸せそうな顔をしてぐっすりお休み中だ。
全くいつまで経っても無茶するのは変わらないなハルヒ・・・。
一瞬ハルヒの体が震えるのを俺は見逃さなかった。寒いのだろうか?
こいつは無理して慣れないお洒落して薄着で色っぽい服で来たからな・・・。
丁度公園の前だったのでハルヒを一旦降ろし、自分の着ていた上着を寝ているハルヒに羽織らせ再びおんぶをする。
寝ているのにハルヒの腕に少し力が入って俺から落ちないように頑張っている感じがなんとも言えない。
普通なら起きるのにな・・・。
・・・俺ってこいつに信用されているんだな。
昔古泉が俺とハルヒは強い信頼で結ばれていると言ってたことをふっと思い出す。
あの時は疑問視し否定気味だったけど、今ならお前の言葉をちゃんと理解し納得できるぜ。
今も昔も俺とハルヒは強い信頼、そしてお互いを愛する気持ちで結ばれているぜ。
これから先の未来も変わらずにな。
END |
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