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キョンならOK
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「あ~ん、はわわわわわわぁぁぁ」
「ほれほれほれ♪もみもみっと」
「あはぁあん、やめてくださいぃぃぃぃ」
「あら~みくるちゃ~ん、また胸おおきくなった~?」
「ああぁ~ん、そんなことないですぅぅぅ」
なんだか文字にするとエロ親父のセクハラみたいだな。
いや、そのだな、いつものように部室でのハルヒと朝比奈さんのじゃれあいなんだな。ハルヒのやつはいつものように後ろから朝比奈さんを抱き抱えつつ、あの魅力的な胸をもみまくってやがる。朝比奈さんはメイドさんの衣装で悶えてるが、その姿はなんとも色っぽいというか、何というか。もう何度も見慣れた光景だが、1年の頃から全然進歩してないよな。長門は我関せずとばかり本をじーっと読んでるし、古泉は苦笑している感じだがいつものように止める気配もない。まぁこの二人に期待する方が無駄なのはわかりきった事で、このまま放置しておくとハルヒは最後には朝比奈さんを裸にひん剥きかねないからそろそろ止めさせよう。
そう思ってると、ハルヒは俺の視線に気がついたらしく、じとーっと睨みつけてきやがった。
「なによ、エロキョン。いやらしいわね」
「ハルヒ、お前が朝比奈さんにしてる事を棚に上げておいて、よくそんな事言えるな」
「ふ~ん、あんたうらやましいんでしょ?」
「何が?」
「みくるちゃんの胸、触ってみたいんでしょ?」
朝比奈さんは小さく、ひいっ、と悲鳴を漏らした。いや、そんな声出さないでください。俺はあなたの味方ですよ、朝比奈さんってば。
そりゃ確かに朝比奈さんの胸はものすごく魅力的なものではあるには違いないが、本人がいやがる事をするほど俺も墜ちてはいないので、その通りに答えておいた。
「遠慮しとく」
「何よ、キョンはみくるちゃんのこのおおきな胸が大好きなんじゃないの?」
そう言って、朝比奈さんの胸をまたもんでやがるし、朝比奈さんもまた悶えてる。やれやれ。
「好きか嫌いかと聞かれたら、当然好きに決まってるじゃないか」
朝比奈さんはさっきよりも少し大きく、ひいっ、と悲鳴を漏らした。だからそんな声出さないでくださいってば、朝比奈さん。
「あのさ、好きなら触ってみたいと思わないの?」
「朝比奈さん本人が望んでないのに、触ったら単なるセクハラじゃないかよ、ハルヒ」
「セクハラじゃないわよキョン、団長命令よ!」
おいおい、今度は命令かよ。もっともそれに従って、のこのこと朝比奈さんの胸を触ったりしたら今度はハルヒは一転して激怒するだろうがな。お前のその気まぐれさは今に始まったことじゃないが、そろそろ真面目に説教した方がいいだろう。とりあえず俺はハルヒの右肩に手をのせた。ハルヒがびくっとして動きを止めた隙に朝比奈さんから引きはがし、ハルヒの両肩に手を置いて正面に立った。
「ハルヒ、お前に言っておきたいことがある」
「な、何よ?」
ハルヒは俺から目をそらした。お前がそういう仕草をするときは、あまり自分のしたことに自信がないときだよな。
「たとえばだ、朝比奈さんがお前に逆襲して胸を触わりまくったあげく、俺に…」
そう俺が言った瞬間にさっきよりも大きく、ひいいぃぃっ、と悲鳴を漏らした。あ、朝比奈さんがハルヒに逆襲なんてないよな。例が悪かった。じゃあそれなら、こう言おう。
「いや、例が悪かった。たとえばだ、長門がお前の胸を触りまくったあげく、俺にも触れと言ったら…」
パタン! と本を閉じる音がしたと思ったら、長門は俺をじーっと見てる。気のせいか俺を批難するよな目をしてるな。そんな事しないってか? うーん、朝比奈さんも、長門もダメなら……おい古泉こっち見んな、お前は今回はお呼びじゃないぞ。
「何よ、キョン、早く言いなさいよ!」
ハルヒのやつ、苛立ってきたな。仕方がない、この部室にいないあの人を引き合いに出すか。
「ああ。たとえばだ、鶴屋さんがお前の胸を触りまくったあげく、俺に”柔らかいからキョンくんも触ってみるにょろ?”とか言ったとするぞ」
「……」
「それを俺が真に受けてだ、ハルヒ、お前の胸をさわろうとしたら、お前どうだ、いやじゃないか?」
「……」
ハルヒのやつ、長門みたいに沈黙して俺から目をそらしたままだ。なあハルヒ、俺なんかに胸触られるのはいやだろ? こういう風に自分が同じ立場にたったら、容易に想像できるだろ?
どうだよ、俺も少しは説得力あるだろ。いや少しじゃない、完璧だ。俺はその時まではそう思っていた。
だがその後に帰って来たハルヒの答えは俺の想像の斜め上をいくものだった。
「キョ、キョンが、さ、触りたいなら、別に…」
「へ?」
つい間抜けな声を出してしまった俺を、キッとハルヒは睨んで言い放った。
「だ、だから!あんたが触りたいなら、あたしは別にいい、って言ってるのよ!」
ちょ、ちょっと待て、ハルヒ。お前、こういう手で俺の完璧のはずの説得をぶち壊すとは…なんてやつだ。
「何よキョン、あたしの胸じゃ触り甲斐ないって言うの!?」
胸を突き出して俺に迫るハルヒ。この想定外の展開に俺の脳内はパニくったため、つい思ったことをそのまま口走ってしまった。
「い、いや、ハルヒ、お前も結構大きいし、形よさそうだし。そ、そうだな、触り甲斐はありそうだよな」
ハルヒは驚いた表情で俺を見、そのあと真っ赤な顔になった。あ、これはマズイ…
「こ、こ、このぉ、馬鹿!エロキョン!」
パシーン!!
俺の頬を引っ叩いた次の瞬間、俺の手を振り切ってハルヒは部室の外に飛び出していってしまった。ふと気がつくと、朝比奈さんはおろおろして、長門はいつの間にか俺の目の前に立ってじーっと俺を見てて、古泉はスマイルしてるが目は笑ってない。
「い、いや、あの」
「「「…」」」
ああ、3人の無言の圧力に加えて、なんとなく視線が冷たい気がする。
「わ、わかったよ、ハルヒに謝ってくるし、ちゃんと連れ戻してくる」
俺は部室を無言で出た。俺が悪い事言ったみたいな感じにされたのは納得いかないが、まずハルヒを探そうか。
とりあえず、どこから探そうか……そう思いつつ歩き出した。おーい、ハルヒ、どこいったんだよ…
「いや、僕としては涼宮さんのあの許可が出た時点で彼が押し倒すくらいの展開になって欲しいです。そしたらこんな苦労せずに済むんですが」
「ほ、本当ですよね。ところで…長門さん、ど、どうしてキョンくんのそばに立って胸を突き出したんですか?」
「……」 |
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