最近ハルヒが長門にベタベタしている。朝比奈さんに飽きたのだろうか。
まあ朝比奈さんとしてはそのほうが気も休まるだろう。しかしそうなると、
「おいハルヒ、長門の邪魔するなよ」
そう、ハルヒは長門の後ろから引っ付いている。本を読みにくそうなことこの上ない。
「いいじゃない。抱きやすいんだもん。ほっぺた柔らかいし」
長門に頬ずりするハルヒ。なにかとても危険な光景が繰り広げられている。
「やめとけって」
ハルヒを引き剥がそうと近づく。
「やだ」
力をこめるハルヒ。長門だからいいものの朝比奈さんだったらダウンしてるな。
しかしそんなにいいものなのかね。空いてるほうの長門の頬に触れてみる。
「む、これは…」
女の子らしく肌は柔らかくスベスベだった。ハルヒがずっと触っているのもわかる。宇宙なんたら思念体の人(?)GJだ!
「あ!こら!有希はあたしのなんだから触るな!」
噛み付かんばかりのハルヒ。
「何言ってんだ。そんなわけないだろ」
「天地、いや宇宙開闢以来団員は団長のものって決まってるの!」
またトンデモ理論か。あながち間違っていない可能性もあるあたりは怖いがここは否定すべきだな。
「勝手なことを言うな。長門だって迷惑してるだろ」
「別に嫌がってないじゃない」
「…俺にはわかるんだよ」
ハルヒの目がつり上がる。長門からハルヒを離すための方便だったのだが何かハルヒの逆鱗に触れてしまったらしい。
「あんたこそ勝手なこと言わないでよ!有希のことはあたしが一番わかってるの!って言うか有希から手を離せ!」
「うお!?ほんとに噛み付きやがった!…ったく、あのなハルヒ、いい加減に…」
「うっさい!もういい!有希はあたしが可愛くしてあげるからあんたは黙ってなさい!ねー有希?」
なんで俺が怒鳴られるんだ。なんとなく腹が立ってきた。
「好きに言ってろ。長門はお前より俺に懐いてるんだからな」
言った後「しまった」と思ったが後の祭り。
「な!?あんた一体何したのよ!バカ!変態!」
「何もしてない」
「嘘!もうあんたは有希に触んないで。あたしが有希のこと見るから」
「お前に任しておいたら長門が変な趣味持つだろ。だから…」
「あんたに任せて根暗で愚痴ばっかになったらどうすんのよ」
「お前な、言っていいことと悪いことが…」
「なによ!」
「朝比奈さん」
「はい、何ですか?」
「僕にはあの二人が子どものことで夫婦喧嘩をしているようにしか見えないのですが朝比奈さんはどうですか?」
「ええと、わたしもそう見えます」
困った顔で笑う朝比奈さん。僕だってきっと苦笑いだ。
この光景があの二人の未来絵図にしか見えない。溺愛する涼宮さんとなぜか涼宮さんより懐かれている彼。
間で黙々と本を読んでいる長門さんには悪いがいい予行演習ではないだろうか。
なんて他人事を決め込んでいたのが悪かったのか。
「古泉!」「古泉君!」
「は、はい。何でしょうか?」
「どっちがいいと思う?」
そんなこと答えられるはずがない。
二人の目が僕を睨む。いたたまれなくなった僕は「朝比奈さんはどう思いますか?」と投げてしまった。
「ふえええ!?」と可愛らしい声を上げる朝比奈さん。そして朝比奈さんに詰め寄る二人。
まあすぐに僕の答えを求めてくるだろう。
なんというか将来に渡ってこんなことが起きそうな気がする。
夫婦喧嘩に巻き込まれてしまうそんな予感。しかしそれも悪くない。
「もう!埒が明かないわ!」
「わかったわかった。じゃあお前の好きなようにやれよ。けど俺も口を出す。それでいいだろ?」
「…しょうがないわね。わかったわ」
僕の思いなんて関係なく二人は仲直りしてしまうということも含めてね。 |