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ツンデレの気持ち
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けっこうキョンと二人っきりになることが多いと思う。
特に勉強教えてるときなんて家族がいるとはいえ部屋に二人っきり。
なのにキョンはあたしに何もしてこない。
たぶんあたしは平均以上だと思う。でもキョンはあたしに興味ないみたい。
キョンだって一応高校生男子なわけだしいろいろと持て余していたっておかしくはない。
それなのに同じ部屋で二人きりの女子高生に何もしないのはいったいどういうことなのだろう。
理由1:ホモ
いきなりこれはどうかと思うけど古泉君が怪しいのよね。妙に近いし。
一応キョンは嫌がってるみたいだけどそれは表面だけで二人きりの時とかはベタベタしてたりして…。
これは世に言うツンデレかもしれない。だとしたら…いやいやそれはない、キョンを信じよう。
もしあたしが神様だったらそれだけは絶対阻止する。
理由2:枯れている
ありそうだけどみくるちゃんにはデレデレしてるし、たぶん違うんじゃないかと思う。
理由3:他に好きな娘がいる
これは…あるかもしれない。特に怪しいのは今は有希…かな。
キョンはそういうとこしっかりしてそうだから他の娘に手を出したりはしないだろう。
…ただの仮定なのに胸が苦しい。きっとあたしはそれが嫌なんだろう。
でももしそうなら…キョンの気持ちだから大切にしてあげたい。
例えあたしが神様だって、どんなに嫌だってその気持ちを消すなんてしたくはない。
なんでそんなことが気になるんだろう。
まさかと思う。もしかしてと思う。あたしはキョンが好きなのかな。
恋なんてただの精神病なんて嘯いておきながらこの体たらく。
違うと否定するにはキョンと一緒にいる時間が楽しすぎた。
SOS団のみんなと遊んでるときも楽しいけど、きっとそれはキョンがいてこそだと思う。
キョンが他の娘を好きだとしたらあたしはどうするべきなんだろう。
当たって…砕けるのかな。
あたしらしさで言うならそれが一番。言わないままのほうがきっと後悔する。
でも怖い。
こんなに怖いと思ったことなんていままでない。
でもそれでもやってみなきゃわからないことがきっとあるから。
「ねえキョン」
「ん?なんだ?」
勉強中、二人きりなので切り出した。
「あんた好きな娘いる?」
「…なんだ突然。お前がそんなこと言い出すなんて明日は雪でも降るんじゃないか」
「真面目に聞いてるの」
「…はぁ、いねえよ。お前につき合わされてると誰かと付き合う時間もない」
ふとキョンがツンデレかもしれないと思ったことを思い出す。
自分の気持ちを素直に認めてないだけで本当は好きな人がいる可能性がある。
「ホントに?いるなら早く吐いちゃったほうが楽よ。守秘義務は守るし」
「いないって言ってるだろ。もしいるならこんなとこでお前と勉強なんかしてねえよ」
そういえばなんでこいつはおとなしくあたしに従ってるんだろう。
団長命令だから?成績が悪いから?でもそれだけじゃないいつだってキョンはあたしの傍にいてくれた。
キョンもあたしのことを好き?なんて傲慢で自分勝手な想像。
「キョンはあたしのこと、好き?」
「な!?……ハルヒ、お前どうしちまったんだ。何か変なものでも食べたか」
「じゃあ嫌い?」
「だからお前は何を言ってるんだ。さっさと勉強に戻ろうぜ」
否定はしなかった。でも逃げているように感じた。
もし本当にキョンがツンデレなら素直になれないだけってことになる。どうしようこのままはぐらかされるのも嫌だし。
…たしかツンデレはストレートな物言いに弱いって書いてあった気がする。「そういうとこ好きだぞ」とか。
「あのね、キョンあたし好きな人がいるの」
とりあえず言ってみた。ここらへんがあたしの精一杯。でもキョンは目を見開いてあたしを見た。
「あたしもすっと気づかなかったんだけど、でもそいつがいないとダメで…」
待って。よく考えたらこの流れだと、このあと告白するしかないじゃない。そ、それはまだ心の準備が出来てない。
「あ、あのキョン。今のは…」
なしと言いかけて止まる。
「そうか、よかったな相手が見つかって」
よく知らない人が見たらいつものキョンだっただろう。でもあたしにはわかった。
顔が少し青くて、指がちょっと震えてて、視線はこっちを見てなくて、声も震えてた。
キョンはショックを受けていた。きっと勘違いしている。キョンにそんな思いをさせてしまったという後悔が頭を塗りつぶす。
なんでもいいからキョンを安心させてあげたかった。
「キョンの…ことだから」
キョンが顔を上げる。キョンの目には聞き間違いかもしれないという不安と聞き間違いではないかもしれないという期待があった。
「変な言い方してごめっ…でも…あたし、ホントに、キョンのこと、好きでっ!」
自分でも気づかなかったけどキョンのショックを受けた顔を見たときあたしは泣いてしまっていたらしい。
ちゃんと伝わったかどうかわからない。でも全部伝えたかった。あたしの想いを全部。
「キョ…あたしっ」
「わかったから泣くな、バカ」
キョンに抱きしめられてた。
「泣きながら告白なんてされたら断りようがないだろ」
仕方ないみたいなその言い方に少し不安になる。同情でOKをもらっても嬉しくなんてない。
でもキョンは抱きしめたそ体勢のままで耳元で囁いた。
「ありがとうな」
その声は優しさと感謝の気持ちでいっぱいだった。
ツンデレってホント素直じゃないんだから。 |
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