「有希って犬っぽくない?」
いきなりハルヒが言い出した。相変わらず予備動作ってものがないな。
「ペットでいうならってことよ。それくらい察しなさいよ」
こいつは人との会話ってもんをわかってないな。
「忠犬って感じ。頭もいいから芸もできそうだしね」
「そうだな基本的には吼えないけど敵がきたらちゃんと立ち向かってくれそうだ」
「そう?」
しまった。VS朝倉を知っている俺はともかくハルヒには理解不能なことだった。
「じゃあみくるちゃんは?あたしはうさぎだと思ってるんだけど」
さっきの疑問はスルーしてくれたらしい。なんにせよ助かった。
「そうだな。寂しいと死んでしまいそうなあたりとかな」
「うんうん。食べたらおいしそうだしね」
「待て」
「冗談よ、じょーだん」
冗談に聞こえなかったあたり日ごろの行いがよくわかるな。
「古泉くんは何かしら?う~ん……」
「あれは狸だろ」
ハルヒは「ぷっ」っと吹き出しながら言う。
「なにそれ、それなら狐のほうがそれっぽいと思うけど」
「まあそれでもいいかもな」
「「じゃあ……」」
期せずして俺とハルヒはお互いを見やる。
「……お前は猫っぽいな。気まぐれだし噛み付くしな」
「む、……まあ否定はしないわ。じゃああんたは……ん~?何かしらね、思いつかないわ」
ここでナマケモノとかおかしな動物に例えられるのも癪なのでこっちから先に言ってやる。
「じゃあ俺は人間だな。それでもって飼い主だ」
「はぁ!?なによそれ!あんただけずるいわよ!だったら団長のあたしのほうが飼い主よ!」
「お前は乱暴すぎて飼い主に向かない。安心しろよ。ちゃんと面倒は見るし」
ハルヒの頭に手を置く。
「可愛がってやるから」
しまった撫でやすい位置にあったからつい触ってしまった……ってハルヒの様子がおかしい。
「な、な、な」
なうーっとでも鳴くのだろうか。あまりそう鳴く猫にお目にかかったことはないが。
「何言ってんのよあんた!か、可愛がってって……バカキョン!エロキョン!」
「何怒ってるんだ。言っておくが俺は猫の扱いには自信があるぞ」
なにせ現在進行形で猫を飼っているからな。少々特殊な猫ではあるが。
「猫だって意外に懐くもんだぞ。膝に乗っかったりしてくるしな。冬は抱くと暖かいし」
「ひ、膝とか、抱くとか言うなバカーーー!」
「……まさかお前自分に置き換えて想像してないだろうな。猫っぽいとかはただの例えだぞ」
「あ、当たり前でしょ。何勘違いしてんのよ!」
「……ならいいが、まあさっきの動物で言うなら俺は猫が一番好きだな」
猫以外にあまり馴染みがないのが大きな理由ではあるがな。
「だ、だから好きとか言うな、バカ……」
ハルヒがまだブツブツ言っていたが放っておいた。
その日の夢は猫耳を生やしたハルヒ(子猫サイズ)が出てくる夢だった。
夢特有のおかしなことをおかしいと思わない現象のせいで俺は疑問にも思わずハルヒ……いや猫にかまってしまった。
えさをやったり猫じゃらしで遊んでやったり膝に乗っけたり風呂に入れたり終いには布団に入れて寝ていた。
起きたときの自己嫌悪は半端なものじゃなかったがなんとかこらえて学校に向かった。
教室に入り席につくと同時にハルヒに殴られた。
文句を言ったが聞く耳を持たず俺は泣き寝入りする羽目となった。
ハルヒは顔を背け「お風呂なんて聞いてなかったわよ、バカ……」とか何とか言ってた。
顔が妙に赤かったので湯冷めして風邪気味なのだろうと思うことにした。
ハルヒを盗み見て思う。
猫耳も似合ってたぞ、と。 |