|
イチバンニアナタヘ
|
|
「よぉ、元気か?」
キョンが来たみたい。
私は窓の外を見つめながら
「ん、まぁね。」
と答え、そちらに目をやる。
「―――――誰?」
なんか見たことがあるような…無いような…?
身長は170くらいね。
髪は無造作に立ってて、今流行のオシャレメガネをかけていた。
…結構カッコイイわ。
ま、ただのイケメンには興味無いんだけどね。
「なんだハルヒ、まだ高校生なのに健忘症か?」
「気安く呼ばないで。誰なの?アンタ。」
その男子生徒は一瞬複雑そうな顔をして
「…笑えない冗談だ。」
と言いながら私の前…
つまりキョンの席に座った。
「ちょっと、そこはキョンの席なんだけど!・・なんなの?アンタ」
「あのな、俺はSOS団n「はやく退きなさいよ。何?SOS団に入りたいの?残念ながらそれは無理ね。SOS団のイケメンキャラは間に合ってるの。謎の転校生って肩書き付の古泉君がね!」
するとその男子生徒はまるで…そうね、「驚愕」という言葉はこの顔の為に在ると言っても過言ではないような顔をしたと思ったら今度はニヤリと笑った。
「―――ほぅ、イケメン…ね。
まさかあの団長様の口からその様なお褒めの言葉が聞けるとはな。」
男子生徒はメガネを外しながらそういった。
ん・・・その顔…
首には昨日、つまりキョンの誕生日に私があげた手作りのマフラー。
ま…まさか・・・・!
「!? きききッ…キョン!?じょ、冗談よ。ってか…なななな何なのよそのカッコ!」
頭が真っ白になる。
「あ―――コレな、」
と言いながら、キョンは無造作に立つ髪を触る。
「昨日、誕生日だったろう?それで谷口が『たまにはオシャレもしてみろ!』なんて言いながらワックスをくれたワケだ。んでまぁつけるつもりは無かったんだが、昨日の夜に机の上に放置しといたら朝、俺を起こしに来た妹が見つけてな。起こすのを忘れて俺の髪を弄り倒したらしい。起きたときには既に見ての通りだったよ。」
キョンはやれやれと溜息をついた。
「ふーん。じゃぁそのメガネは何なのよ。伊達?」
「いや、度入りだ。」
キョンはメガネを掛け直す。
「あんた、目悪いっけ?」
「実はな。いつもコンタクトだったんだ。…で、さっきも言ったが妹が髪弄ってて起こさなかったもんだから遅刻ギリギリでコンタクトする余裕も無かったのさ。」
「ふーん。そんだけ髪弄られて起きないアンタも凄いわよ。」
…ぐ、それにしてもカッコイイわね。似合いすぎだわ‥って!なに考えてるの私。
「どうしたハルヒ。」
?
「顔、赤いぞ?風邪か?」
「んな!!!み、見るなエロキョン!バカ!」
「はいはい」
キョンはそう言いながら前を向いた。
ちょうど岡部が入ってきて、HRが始まった。
HR中
突然、キョンがこっちを向いて
「まぁなんだ、その…ちょっとは似合ってるか?」
って聞いてきた。
キョンの口からそんな言葉が出てくるなんて!
最高に似合ってる。…なんて素直に言えたらいいのにね。
「まぁ普通じゃない?」
「そうか…」
と言ってまたキョンは前を向く。
その時のキョンの顔が、少しだけ、ほんの少しだけ…残念そう?に見えた。
HR後。
キョンはなんかの参考書を読んでる。
ようやくキョンにも学生としての自覚が…
ん?
谷木田コンビが近づいてきた。
キョンは気づいてないみたいね。
国木田が携帯を取り出してなんか操作している。
「キョン、こっち向いてよ。」
「なんだ」
キョンが国木田の方へ顔をやると
パシャッ
「うぉ!?」
国木田がケータイでキョンの写真を撮った。
「何しやがる!」
「へへへ」
国木田は携帯を操作しながらキョンから逃げる。
「おい国木田!」
キョンが追おうとすると谷口が間に入って
「まぁキョン、落ち着けって。親友の俺等としてはお前のちょっと遅めの高校デビューを純粋に喜んでいるのさ。」
「なんだと!?」
なんてキョンと谷口がやり取りをしてる内に国木田が
「・・・送信♪っと。」
「おい、国木田。送信ってなんだ。誰だ。誰に送った!?」
キョンが慌ててる。
…慌てるキョンも可愛いわね。誰に送ったのかしら。女の子?…だったら嫌だけど。
それから国木田、後であたしにも送りなさい。
そして一時間目の授業が終わった後の休み時間。
また谷木田がキョンの席までやってきて喋っている。
私は昨日の夜、寝るのが遅くて寝不足だったから机に突っ伏してる。
そんな時、キョンの携帯の音がした。
「ん?―――佐々木?」
ドキ。…
「国木田、まさかお前…さっきの…」
とキョンが言い始めると二つの足音が遠ざかる。
「おい!待t」
二人は逃げていったみたい。
薄目を開けて腕の隙間から前を見る。
携帯に目を落とすキョン。
きっと佐々木さんからのメールを読んでいるのだろう。
―――キョンが…とても優しく、そして嬉しそうな微笑を浮かべてる。
ズキ。
…んぐ!
あたしは我慢できなくなって飛び起きる。
そのままの勢いでキョンの携帯を奪った。
「お、おい!」
私はキョンに背を向け、携帯の画面を見る。
『―――キョン、とても似合ってると思うよ。』
世界が静止した。
…あたしが言いたかった言葉。
大好きな人に
一番に言いたかった言葉。
でも素直になれなくて
言えなかった言葉。
キョンはあの夢の朝、言ってくれた。
でも私は…
涙が溢れそうなのを必死で堪える。
悔しい。素直になれなかった自分が悔しい。
もうダメ。溢れそう。
涙が頬を伝っ…
誰かの指で拭われる。
いえ、よく知ってる人の手。
顔を上げると目の前には…
「キョ‥ン、ほんとは一…番に言いたかったんだ…け…ど…」
「…ああ」
「…‥似合ってるわよ…。」
「一番だって。」
「…ぇ?」
「最初に言葉で“言ってくれた”のはハルヒだろ?」
そう言っていままで見せたどんなものよりも優しい笑顔で
「…」
「ありがとな。ハルヒ」
fin |
|
|
|
|
|
|
|
|
|