haruhi-ss 俺的ベスト(おれべす)

1. 10年越しの手紙
2. 1日遅れのひな祭り
3. 25
4. 25年前の七夕
5. B級ドラマ~涼宮ハルヒの別れ~
6. DoublePlay
7. for Heroines, Kyon losing filters (AA)
8. Girl's Day 
9. HARUHI!
10. I believe…
11. imouto
12. Legend of Necktie
13. Lost my music
14. MASAYUME
15. Petit-haruhi
16. proof
17. Special Window
18. あ~ん
19. あたし以外の
20. ある『幸せ家族』
21. ある雨の日のハイテンションユッキー
22. ある女子高校生の二ヶ月間の乙女日記
23. イチバンニアナタヘ
24. ウソとホントの狭間で
25. お互いの気持ち
26. お前がいるから
27. お悩みハルヒ
28. カエルのたましい
29. カチューシャ
30. ぎゅ
31. キョン1/2
32. キョンがアンケートから情緒不安定になりました
33. キョンとハルヒの事実婚生活
34. キョンならOK
35. キョンにとって
36. キョンのベタ告白
37. キョンの弁当
38. キョンの誘惑
39. キョンの涙
40. キョンは死なない
41. ご褒美ごっこ
42. ジュニア
43. ジョン・スミスの消失
44. スッキリおさめる
45. それから
46. それは誤解で勘違い
47. ただの人間
48. ダブルブッキング
49. ツンデレの気持ち
50. どうして
51. ねこねこ
52. ばーすでぃ
53. はい、メガネon
54. パパは高校1年生
55. ハルキョンズカクテル
56. ハルキョンのグダデレ
57. はるひ の のしかかる こうげき!
58. はるひすいっち
59. ハルヒとバーに
60. ハルヒと長門の呼称
61. ハルヒの悩み
62. ハルヒは俺の──
63. ファーストキスは誰のもの?
64. ふっくらふかふか
65. フラクラ
66. フリだけじゃ嫌!
67. まだまだ
68. ミヨキチが長門とキョンの娘だったら…?
69. モノマネ
70. やきもち
71. やれやれ
72. ヨイコク
73. リスペクト・ザ・ハイテンションユッキー
74. 悪夢を食べる聖獣
75. 雨宿り
76. 花嫁消失
77. 覚めざらましを
78. 完璧なポニーテール
79. 許婚と最愛の人
80. 距離
81. 教科書と嫉妬
82. 迎えに行くから
83. 結婚記念日の怪
84. 月で挙式を
85. 月と徒花
86. 犬も食わない
87. 古泉の陰謀
88. 古泉一樹の親友
89. 孤島(原作版)にて
90. 幸せの連鎖
91. 幸運な日
92. 佐々木IN北高
93. 思い出はおっくせんまん
94. 射手座の日、再び
95. 習慣化
96. 充電
97. 女、時々酒乱につき
98. 女の子
99. 小さな来訪者
100. 小春日和
101. 少女の願い
102. 消失if else
103. 笑顔の花嫁
104. 心配
105. 新春到来
106. 酔いどれクリスマス
107. 生き物ってつらいわね  
108. 醒めない夢
109. 宣戦布告?
110. 前日の酔っぱらい
111. 素直になれなくて
112. 素敵な旦那様の見つけ方
113. 谷口のミニ同窓会
114. 谷目
115. 暖かな2人
116. 朝比奈みくる、十七歳です。
117. 朝比奈みくるの最後の挨拶
118. 長門さんとミヨキチ
119. 長門さんと花
120. 長門有希さんの暴走
121. 長門有希の嫉妬
122. 長門有希の憂鬱
123. 通行人・涼宮ハルヒ
124. 冬のあっため方 
125. 動揺作戦
126. 二度目の消失日
127. 日記と六月の第三日曜日
128. 濡れ衣だなんて言えない
129. 猫は同じ夢を見るか
130. 彼の決意
131. 不思議戦隊SOS
132. 普通の日
133. 報復の仕方
134. 北高生人気投票
135. 未来からの電話
136. 無題(Disappearance of Yuki Nagato)
137. 無題(テクニシャン)
138. 無題(ハルヒ以外の……女には…興味がねえ!!)
139. 無題(ホスト部)
140. 無題(今日は春休み初日…)
141. 無題(暑いからくっ付けない)
142. 無題(席順)
143. 無題(湯飲み)
144. 無題(閉鎖空間)
145. 無題(別視点からはバカップル)
146. 遊園地は戦場と心得よ
147. 様
148. 裸
149. 涼宮さんとキョン子さん
150. 涼宮ハルヒと生徒会
151. 涼宮ハルヒの影響
152. 涼宮ハルヒの改竄
153. 涼宮ハルヒの軌跡
154. 涼宮ハルヒの疑惑
155. 涼宮ハルヒの強奪
156. 涼宮ハルヒの決心
157. 涼宮ハルヒの結末
158. 涼宮ハルヒの催眠術
159. 涼宮ハルヒの終焉
160. 涼宮ハルヒの出産
161. 涼宮ハルヒの正夢
162. 涼宮ハルヒの喪失 
163. 涼宮ハルヒの泥酔
164. 涼宮ハルヒの転換
165. 涼宮ハルヒの糖影
166. 涼宮ハルヒの独白
167. 涼宮ハルヒの微笑
168. 涼宮ハルヒの邁進
169. 驟雨

涼宮ハルヒの邁進
プロローグ


 俺の日常はきっと赤の他人から見れば、まあ大変ねとか、苦労なさっているんですねとか言われてしまうようなきわめて非日常的な状態にあるんだろうが、俺にとってはこれが楽しくて仕方がないごくごく普通の日常であると断言できる。
 宇宙人・未来人・超能力者。こんなのが得体の知れない情報爆発女を中心に闊歩している世界に俺のようなきわめて一般的平凡スペック人間がコバンザメのようにくっついて歩いている光景は、確かに不釣り合いと言えばその通りである。が、いったんそんな現実を受け入れてしまえば、細かいことはもうどうでもよくなり、どうやってこの微妙に非日常を満喫するか考える毎日だ。
 てなわけで、本日もハルヒ発案による不思議探索パトロール中である。相変わらず、ハルヒの望むような変なものが見つかるわけでもなく、ほとんどSOS団という謎の集団による食べ歩き・散策・名所巡り状態になっているが。
「にしてもだ。ハルヒが本当に変なものに遭遇を望んでいるなら、とっくに見つかっていそうだけどな」
 俺は朝比奈さんをうらやましくも抱き寄せほおずりしながら歩くハルヒを尻目に言う。それにすぐ横を歩いていた古泉は苦笑しながら、
「涼宮さんにとってそういった奇怪なものを見つけることよりも、我々と一緒に遊ぶことの方が楽しいのでしょう。そうでなければあなたの言うとおり、今頃町中がエイリアンやUMAで溢れかえっていますよ」
 確かのその通りだろうな。実際に俺もそんな物騒な連中が現れずに、こうやって遊び歩いている方が遙かに楽しい。ハルヒ自身も未知との遭遇がなくても、現状の不思議探索パトロールで満足しきっているんだろうな。
 と、古泉は珍しく胡散臭さのない屈託のない笑顔で、
「このままこの日常が続けば良いですね。僕のアルバイトもいっそのこと無くなってしまった方がいいですし」
 そんなことをしみじみとつぶやく。
 お前達の言うようにハルヒが世界を平然と作り替えられる能力を持った神的存在って言うなら、この平穏な日常は永遠に続くだろうよ。ハルヒがそう望み続ける間はな……
 
 ……この時まで俺はそう確信していた。

「ちょっと公園で一休みしましょう」
 そうハルヒの一声で俺たちは公園のベンチに座る。ところでハルヒさん。いくら何でもずっと朝比奈さんに抱きついたままなのはどうかと思うぞ。全くうらやまし――じゃない、少しは朝比奈さんの迷惑を考えろよな。
「いいじゃん。今日は思ったよりも寒かったからカイロが必要なのよ。う~ん、さっすがみくるちゃんは暖かいわね」
「ふえ~」
 ハルヒの傍若無人の振る舞いに朝比奈さんは困り切った顔を浮かべているんだが、ついついそんな彼女にもこうエンジェル的優美かつ華麗さを感じ取って見とれてしまう俺も相当罪深い。アーメン。俺の男としての性を許してくれたまへ。
 一方の長門は相変わらずの無表情ぶりでベンチの上にちょこんと座っている。すっかり謎の超生命体印の宇宙人というよりも文芸部部長兼SOS団最大の功労者という肩書きが似合うようになった。そんな彼女も今日もいつも通り無表情・無口で無害なオーラを延々と見せているところから別に変なことが背後やら水面下とかでうごめいてはいなさそうだな。
 ふと、ここでハルヒと目が合ってしまった。なんてこった。俺としたことが飛んだミスを。
「ちょっとキョン。のどが乾いたからみんなにジュースを買ってきなさい。あ、当然あんたのおごりでね」
「何で俺が」
 横暴極まりない俺への指令に、俺は抗議の声を上げるが、ハルヒは朝比奈さんを抱きしめたまま、
「今日も遅刻したじゃん。罰金よ罰金! ほらほらぶつくさ言わないでとっとと買ってきなさい!あ、あたしは暖かい紅茶でね♪」
 満面の笑み100%を浮かべているところを見ると、全く今日もいつもの傍若無人ぶり全開だな。いつもどおりってのも安心できると言えばそうなんだが。
 俺は長門と古泉、それに朝比奈さんの要望を聞くと、近くの自販機を探し始めた。ちなみに俺の癒しの朝比奈さんは、ごめんなさいとぺこぺこしていたが、そんなに謝る必要なんてありませんよ。あなたがアルプスの天然水が飲みたいというなら、今すぐ新幹線に飛び乗っていくことなんておやすいご用ですぜ。
 しばらくきょろきょろと見回していた俺だったが、やがて公園に乗ってはしる道路の向こう側に自販機が並んでいるのが目に入った。俺は横断歩道の信号が青になったことを確認し、小銭を数えながらそこを渡り始める。
 ――キョンっ!? 後頭部に突然ハルヒの声がぶつけられる。そのあまりに突飛な声に何事だと俺は右回り180度ターンで振り返っている途中で気がついた。俺の鼻先30センチのところにばかでかい巨大トラックがいることに。当然ながら空中に突如出現したわけでもなく、猛スピードで信号を無視して俺に突っ込んできている。
 鈍い衝撃が俺の鼻に直撃した以降、俺は何も感じなくなった――

 ――キョンっ――キョンっ――お願い――目を開けて――
 ハルヒの声だ。何だやかましい。言われなくてもすぐに起きてやるよ……
 俺はすぐにまぶたを開こうとして気がついた。どれだけ強く力を込めて目を見開こうとしてもまるでそれを拒否するかのように、強くまぶたが閉じられている。目の上の筋肉辺りは動いているようだったが、肝心のまぶたは力を込めると逆にしまりが強まる。くっそ――どうなってやがる……
 ――キョンくん……どうして……こんなことに――
 次に聞こえてきたのは朝比奈さんの声だ。耳に届く美しい言葉に俺は再度目に力を入れるが、やはり開かない。
 ずっと続く闇の中、朝比奈さんのすすり声だけが俺の脳内に響く。ここで気がついたが、俺の手足も俺の意志に反して全く動かなかった。まるで全身に釘を打ち込まれたかのように身体が硬直し、直接的な痛みよりも動くはずの俺の身体が動かないというもどかしさに、俺は強烈ないらだちを憶えた。
 しばらくして朝比奈さんのすすり泣きも聞こえてこなくなった。そのままどれだけの時間が過ぎたころだろうか。いい加減、自分の身体が動かないことにあきらめつつあったころ、今度は言い争いが聞こえてきた。はっきりと言葉の末尾が聞こえないが、片方が古泉の声であることはすぐにわかった。聞いたことのない男の声と激しくやり合っているみたいだ。おい古泉、そんな声を出すなんてお前らしくないぞ。どうした? しばらく意味不明な怒声のキャッチボールが続いていたが、やがてバンという大きな音とともにそれが止まった、
 ――何――やってんのよ――病人の前なのよ!? 出て行って! 出て行ってよ!――
 ハルヒの声だ。すまん、ハルヒ。助かったよ。これが続いていたら俺の耳がくさっちまいそうだ。ん? 今ハルヒはとんでもないことを言わなかったか? なんだったっけ……ま、いいか。ちょっと眠くなった。寝よう……
 ――やあ、キョン――
 ……ん、誰だよ。人が寝ているってのに……
 ――久しぶりに顔を合わせたかと思えば、こんなことになってしまうとは、ついていないと言えば良いんだろうかね? ……うっさいな、俺は眠いんだよ。寝かしてくれ……
 ――僕は君が起きているつもりで話すよ。いまさらだけどね。少しでもその意味を理解できているなら――
 俺はここで眠りに落ちた……
 一体どのくらい経ったんだろうか。眠っては起きてまた眠っての繰り返しの日々。いい加減飽きてきたんだが、起きても指一本動かせず、目すら開かないのでどうしようもない現実だ。聞こえてくるのは耳を通してではなく頭蓋骨を伝わってくるようなぼやけた声だけ。最初はそれを聞き取ろうと努力したんだが、どうやら俺がどうこうしても無駄なようだ。はっきり聞こえてくるときとそうでないときの違いは、俺の意志や努力とは関係なかった。
 そして、久しぶりにはっきりと聞こえた声。
 ――ゴメン、キョン。全部あたしの責任よ。あたしがあの時あんたを使いっ走りにしなければよかった。
 ――あたしが悪いの――――――――――――ごめんなさいっ――――本当にごめんなさい――だから目を開けて――お願い――
 そんな悲しそうな声を出すなよ、ハルヒ。お前のせいじゃないに決まっているだろ? 自分をあんまり責めるなよ。らしくなさすぎるほうが帰って俺を不安にさせるんだからさ。大体、あんなことはいつもどこかで起きているんだから――あれ? なんだっけ? 俺、なんかとんでもない目にでも遭ったのか? なんだっけ……
 それから果てしない時間が過ぎたような気がする。
 もうはっきりした声も聞こえなくなり、雑音のような声らしきものが俺の脳内に拡散していく毎日。
 飽きたなんて言う感覚すら通り越して、意識が麻痺しているんじゃないかと思いたくなるほどの無感状態になっていた。
 寝て起きて寝て起きて寝て起きて寝て起きて――もう考えることすらうっとおしくなってきている。
 ――あきらめないで。
 長門の声だ。すごく久しぶりに聞いた。ちょっとうれしくなる。すまないがちょっと俺の目を開ける手伝いをしてくれないか? ――今、わたしは何もできない。
 そりゃまた白状だな。SOS団の仲間だろ? ――あなたと意識レベルでの言語的会話をすることが、わたしにできる唯一できること。
 なら、せっかくだ。話でも聞かせてくれ。そうだな。おとぎ話でもいいぞ。いい加減、退屈で感覚が麻痺しているんだ。
 ――残念ながらわたしにはあなたの身体構造の再起動を促せるような言語刺激を持ち合わせていない。
 そうか。それなら仕方がないな。そろそろ眠たくなってきたから、寝るよ。
 そうだ、また退屈になったら話してくれないか? ――もうこのインタフェースであなたと会うことは二度と無いかもしれない。でも聞いて。
 なんだ? ――このままでは涼宮ハルヒはこの惑星にすむ知的生命体全てからの憎しみをぶつけられる。
 ――そして、世界は消滅する。
 は? なんだそりゃ。そんなことがあってたまるか。
 ハルヒはな、確かに行動が突飛だったりわがままだったりするが、何だかんだで常識的な奴なんだよ。
 人を本気で傷つけたりとかなんてしないしな。見た目で判断するんじゃねえよ。
 誰も彼もが誤解しているってなら俺が教えてやる。ハルヒって奴が本当はどんな奴って事をな……
 そう思った瞬間、今までの目の拘束状態が嘘だったかのように消える。
 そして、俺はゆっくりと目を開いた……

「涼宮ハルヒの邁進 その1」へ


「涼宮ハルヒの憂鬱」の名称、画像、その他の著作権は、谷川流、いとうのいぢ、SOS団、角川書店、京都アニメーション、その他それぞれにあります。
また、SS、AA、画像の著作権も、それぞれの作者に帰属します。
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Last Update 2009/11/10
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